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zoom RSS 大衆演劇、「これから」のために、楽しむために -ある『カラスの仁義』から-

<<   作成日時 : 2016/12/10 00:53   >>

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大衆演劇ファンの皆さん。
定番のお芝居を避けていませんか?
それより「新作が観たい!」
「この特別狂言の日に行こう!」とか言っていませんか?
旅役者の皆さん。
先人たちから継いできた定番のお芝居を
ただ流れ通りに筋をなぞっただけで演じていませんか?
見直してみよう。考えてみよう。
そして力をつけよう、舞台の上の皆も客席の皆も。
そうすれば芝居がきっともっと面白くなるのではないか。
つまりは大衆演劇がきっともっと面白くなるのではないか。
ある凄ぇ面白かった芝居からそんなお話を少し―

今年2月、ある芝居を観た。

『下総男詩 カラスの仁義』。
(またの名を『月夜の旅鴉』。一部系列では役名を変えて『天竜母恋笠』)
どこの劇団でも演じられている大衆演劇芝居のTHE定番のような芝居だ。
大衆演劇芝居の教科書的スタンダード芝居のひとつだ。

賭場荒らしの一味。
お頭「八丁荒らしの権九郎」が今宵の仕事を終え
分け前を分けようとした時に下っ端「雁八」が願い出る。
国許から知らせがあり年老いた父(または母)が病の床だ、足抜けさせて欲しい。
お頭と一味は雁八を殺す。
その雁八の今わの際に立ち合ったのは兄貴分でありお頭の信頼も厚き「明烏の新太郎」。
新太郎は雁八の最期の願いとして
父(元はヤクザ「行徳の仁平衛」)へ雁八から受け取った金を渡し最期を伝える。
そしてお頭を討つ。

テーマをこじつけるなら「勧善懲悪+親子の情愛、ヤクザの悲哀」?
そんな感じでやっている劇団が多いか。
いや、それすら考えずやっているところも多い気がする。

けれど私が観た芝居は全然違っていた。
座長演じる「新太郎」(私的、九州演劇協会一巧い正統派旅役者)と
特別ゲストの大ベテラン(九州大衆演劇界の怪人、生ける伝説)演じるお頭「権九郎」、
二人の男が道と筋をぶつけ合うハードボイルドになっていた。

画像


ベテラン氏(師)は言う、「権九郎も新太郎も雁八も皆ただの賭場荒らしだ」。
皆世間に背を向けた者たちだ、ただのカラスだ、
ヒーローじゃない、ヒーローなんて居ない。
そんな一味の中で親がどうだか知らないが雁八が仲間を外れたいと申し出た。
こういう奴は足抜けして捕まったらぺらぺらと元仲間だった一味のことも喋る。
皆の身が危ない。消されて当然。
(そもそも男が一度決めた道をおりるだなんて男じゃない)
そんな雁八が兄貴と慕う主人公の新太郎は腕の立つ男、
お頭からの信頼も厚く、雁八からも慕われている。
最期の願いだと聞き入れて父(または母)へ金を渡し最期を伝えにゆき敵を・・・
お頭からしたら納得がいかない。
こんなしょーーもないやつの敵だと一番信頼してる奴がドスを向けてきた。
やるのか。本当にやるのか。なぜおまえとやり合わなきゃならねえんだ。
そうして新太郎は権九郎を斬る・・・が、決して悪を退治したなんて簡単な話ではない。
新太郎は弟分のため、約束を果たした、筋と道を通した、けれど、けれど・・・
ラスト。新太郎は花道をゆく。
どこか虚しさのようなものを抱え、けれど歩みを進めてゆく、ゆかざるをえない。
きっと先を見つめ、強い目で歩いてゆく、見送る雁八の父と妹、チョーン、幕。

なんとも筋が通っていた(芝居の中でも、演じる上でも)。
演じた役者たち皆にぴたりと合っていて(壺も、ナカミも)役者力も伴っていた。
だから役と役者と物語(おはなし)がしっくりきてひとつの作品となっていた。
『下総男詩 カラスの仁義』、本当に「男」の詩(はなし)でカラスの「仁義」だった。
男と男、男の孤独、そして生きることの虚しさすら感じさせる芝居に見えた。
小品の定番芝居だが唯一無二の「作品」となっていた。面白かった!

「こうあって欲しいなあ」

勘違いしないで欲しい、
「この芝居ではこれが正解形だ!」と言いたいのではない。
このハードボイルドなカラスの仁義を全ての役者や劇団がただ真似したって
壺(ニン)が違えば合わないしナカミが伴っていなければカタチだけ。
芝居は感性(ナカミ)、いい悪いはない、それぞれさまざま。
そうではなくて、あくまでこれはひとつの例。
大衆演劇、先人たちから受け継いできた定番の芝居を
ただ筋と流れを追ってなぞり流すのではなく
≪自分たちの壺に合う配役や演じ方≫で「俺と俺たち」が演じるもとい≪生きる≫。
そうすればあらすじや登場人物は同じ定番芝居でも自然と変わると思う。
もしかしたらテーマだって、オチだって大きく変わる。
役者と役者がその物語(おはなし)のセリフを読むのではなく、
役と役が「セリフ(気持ち)」を言葉にし受けて返しセッションする、そうするときっと自然と変わってゆく。
その劇団その役者たち「自分たちのモノ」となる、唯一無二のオリジナル作品となる。ちゃんと、「生きる」。
そうすると・・・既存の定番芝居がもっと面白くなると思うのだ。
新作?そりゃやりたい観たい。特別狂言?そりゃ気合いが入るだろう観たい。
けれどたくさんたくさんある毎日の定番芝居ももっともっと面白くなる。
全ての芝居がもっと面白くなる、大衆演劇の芝居が、つまり大衆演劇の舞台がきっと!もっと!面白くなる。

見直してみようよ。考えてみようよ。そして力をつけようよ。役者も。そして、私たち観客も。
これからのために。いいえ、楽しむために。

だって、本当に面白い芝居が観たいじゃないか。本当の達成感・満足感を味わいたいじゃないか。

2月、その『下総男詩 カラスの仁義』。
ベテラン役者がゲストとしてお頭を演じたことでがらり変わったその日
お客は勿論座長と座員は終演後高揚感でわくわくと目を輝かせていた。
「こんなに変わるもんなんですね!」「凄い!」「楽しかった!」
そんなゲストが育て上げた劇団では今日も座長が矜持ある笑顔で言うと聞く、
「ウチは毎日が特選狂言です」、なんて素敵なんだろう。

嗚呼、皆がそう言えればいいな、なれればいいな。

そうなれば、きっと、もっと、本当に楽しい。大衆演劇がもっと本当に楽しくなる!

みるめ厳しい、いやいや、贅沢で欲張りでワガママ、
芝居に関し大衆演劇に関しいつもガチンコストロングスタイル一歩も譲れぬ物書き桃、
そう思います、願うのです、だいすきだから。だいすきだからこそ。



※omake※
先日書いたこの記事と合わせてどうぞ。
【桃的、大衆演劇の芝居の話-・・・からの(やはり)大衆演劇讃歌-】
http://momo1122.at.webry.info/201610/article_3.html

そして過去のこんな記事も・・・
【いい芝居とは〜My Dear, 大衆演劇、役者さんとお客さん〜【はじめに】】
http://momo1122.at.webry.info/201503/article_1.html

【「一番凄ぇのは、大衆演劇なんだよ!!」-≪舞台=生活≫の難しさ、せやからこその素晴らしさ- 】
http://momo1122.at.webry.info/201406/article_4.html


■DATE■
2月24日、昼の部。 
「劇団三桝屋」、二代目市川市二郎座長 & ゲスト・美影愛
湯の迫温泉・大平楽 こうげ武楽里 ぶらり劇場にて。

この2人でのこの芝居は約30年ほど前、大分県はスギノイパレスの大劇場で観客はもちろん従業員皆を虜にした芝居。
昼は『カラスの仁義』、夜は『団七』(歌舞伎の夏祭浪花鑑ね)で一か月毎日だったとか。
今の九州のある中堅座長もビデオで観てお手本にしているとブログに書いておられましたね。

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